デモムービー概論
「ゲームの面白さにムービーは殆ど影響しない」高幡さんのこの指摘は恐らく的を得た意見でしょう。ですが、それならば何故メーカーさんはデモムービーを必要とするのか、この考察は抜けていますし、敢えて抜かして書かれたものかも知れません。
デモムービーが公開されている場所を考えてみましょう。
一つにはもちろんWeb上があります。そして店頭における上映があります。この、店頭における上映と言うのが地方に在住する人には馴染みが薄いものなのですが、影響力はWebより遙かに高いかも知れないのです。
店頭デモの役割は言うまでもなく「こうしたゲームが発売されるよ」と言う宣伝チラシです。事前上映もありますが、かなりの割合で発売後に集中的に上映するケースが多い。店によって多少異なりますが、その月に最も売りたいゲーム=仕入れ本数の多いゲーム、が一種専用のコーナーで連続上映されます。
当たり前の話ですけども、18禁ゲームを販売する店舗には、そうしたゲームを求める客層しかあり得ません。その客層へアピールするのに店舗にとってデモムービーほど手軽な宣伝媒体もないでしょう。絵と音楽とおおまかなゲームイメージを一度に購買客の頭へプリンティングすることが可能なのですから。
もちろん、お客さんもバカではありませんからムービーのみで購入を決めるほどの人は少ないでしょう。高幡さんの指摘にあった通り、Windぐらいになると別ですけど。
ですから、他に目当てのゲームを買いに来ていて、ちょっと気になっていたゲームの購買欲を少しだけ後押しする存在。それがデモムービーなのだと思います。
最近の例では、AngelWishが好例ではないのかな、と思います。フルアニメ、と言う点は言うまでもありませんが、注目させるには十分美麗なムービーでした。話に聞く限り、ムービーが販売数を大幅に増やした数少ない例だと思います。
ところが、この販売本数は部外者には与り知らないことが多く、業界紙PCニュースでもポイントでしか表記されていませんから、おおよその数を推測するしかありません。
推定情報を考えて、1万本以上黙って売れるメーカーさんなら、中堅以上と言われているのでしょう。そうしたところにはデモムービーの効果は本数にさほど影響を与えないのではないでしょうか。
この場合のムービーの役割は、発売日告知、又は店頭で流すことにより購買層へ「あ、もう発売されているんだな」と言う意識を想起させる因子となります。
つまり、元々買うつもりだった購買層へのダメ押しと言えるのです。
もちろん、中堅以上のメーカーの意地にかけてお粗末なムービーは出してこないでしょうし、事実その通りの流れになっていると思います。
デモムービーを本数上乗せのため重要視するとしたら、新規メーカーでしょう。TypeMoonのような場合は別ですけど、とにもかくにも新規メーカーは注目されてくれなければ困る。原画や音楽、シナリオあるいは声優、と言うゲーム本体を構成する布陣に恵まれているところもあれば、そうでないところもある。
しかし、いくら布陣に恵まれていても、ゲームやメーカーの存在を知ってもらわなければ全く意味のないことです。
新規メーカーさんのデモムービーによる売り上げ貢献度が中堅メーカーさんと違う点は、「同じ売上本数の上乗せでもメーカー規模によってその意味合いは全く違う」からです。
10万本売るメーカーさんの1000本上乗せと、2000本売るメーカーさんの1000本上乗せでは全く意味合いが違う、と言う意味です。
ですから残るは、事前宣伝、あるいは店頭での宣伝でどれだけ目を引けるかに係ってきます。
ここでがらりと話を変えて「AIDMAの法則」をご紹介しましょう。
A = Attention 注目させる
I = Intrest 興味を起こさせる
D = Desire 欲望を抱かせる
M = Memory 記憶させる
A = Action 行動させる
これは、広告・宣伝における基本的な原則の一つです。
良くできた宣伝媒体は、例え1枚のポスターでも、この原則全ての効果を備えています。
そして、ムービーはこれらの法則を実に簡単に体現出来る媒体とも言えるでしょう。
まず、動いていることで注目させ、絵や音楽で興味を引かせる、ちょっとHシーンを垣間見せて欲望を抱かせ、特殊効果やデザインなどで記憶させる。最後に発売日をインプリンティングすることで購入に走るきっかけにする。
他にも「3Bの法則」や「5Iの法則」などがありますので興味のある方はお調べ下さい。
新規メーカーさんがこれを利用しないテはないことがおわかりだと思います。
さて、Webで公開されるデモムービーと店頭デモの役割分担なのですが、私個人は、Web発表が新聞折り込み広告、店頭デモが特売を表示する正札だと思っています。(別に安売りするって意味じゃないですよ?w)
正直なところ、Webの評判より、店頭で流すことで、本来買う予定のなかった購買層が「ついでに買ってしまう」現象を引き起こす方がデモとして優秀だと言えます。
そして、新規メーカーさんにとっては、デモは確実に売り上げ本数を左右する媒体と言えるでしょう。
ただ、もう1点デモには重要な意味があります。それはオープニングムービーを兼ねている場合が多々あると言う点です。
以前、Galge.comさんで、ムービー制作会社「R.M.G」のインタビュー(※掲載者注)で語られた通り、デモとオープニングは、コストと時間制限の面から2種類作るのは難しい状況にあります。
ただ、ゲーム本体にとって、オープニングをプログラムで作るよりコストが安いと言う点で有用な方法とも言えるでしょう。プログラムであっても、ムービー並の映像を作ることは可能です。しかしそれには膨大なコストと手間がかかりますから、プログラムオープニングの場合は、比較的簡単なものになりがちです。
それよりはコストも安く、プログラムと同じ時間単価ならば、マシンスペックが上昇し、高解像度のムービー再生も可能になった現在、より複雑なオープニングを作れるムービーへシフトして行くのは理の当然と言えます。
意外と言えば意外だったのが、Leaf「天使のいない12月」のオープニングがプログラムではなくMpegだったことですね。あれは、てっきりプログラムかと思いました。失礼ながら、それほど簡単なムービーだったと言うことですが。と言うのは「Leafさんだし、ムービーなんか使わないでも売れるだろうしなぁ」と先入観があったもので(苦笑
むしろ、かなりの額をムービーにだって投入出来るメーカーさんですから、ちょっと意外でした。
話が脱線しましたが、そろそろ纏めに入りましょう。
1 デモムービーはメーカー規模とムービー貢献度に反比例傾向がある。
2 デモムービーはWeb公開と店舗公開で目的に棲み分けがある。
3 デモムービーは手軽かつ広告原則にかなった媒体である。
4 デモムービーはオープニングと兼用することでコストダウンの手段として使える。
以上のようなことが、メーカーさんがデモムービーを必要とする側面的理由なのではないのかな、と思います。
付則。
5〜10万本以上売るような神々の領域のメーカーさんだと、これらの考察は殆ど役に立たない。何故なら、アニメ戦略やコンシューマ戦略が加わるため。
2005/01/15 霧島緑
※掲載者注
ムービー制作会社「R.M.G」のインタビュー
また、この文章は2004/12/1付のコラムと対比させて読む事をおすすめします。
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